近年、仮想空間「メタバース」が注目を集めています。その影響はエンターテインメントやゲーム分野にとどまらず、教育、ビジネス、観光など、さまざまな分野で活用され始めています。特に日本では、アニメやゲーム文化の影響を受けた独自のメタバースプラットフォームが登場し、世界からも注目されています。
この記事では、日本におけるメタバース関連企業の取り組みや成功事例、直面する課題、そして未来展望について詳しく解説します。日本特有の文化や技術を活かしたメタバース産業が、どのように進化し、世界でどのような存在感を示していくのかを探っていきます。
これからの社会やビジネスを大きく変える可能性を秘めたメタバース。国内外の市場でその影響力が拡大していく中、日本発のメタバースがもたらす未来について一緒に考えてみましょう。
Contents
メタバースと日本の市場動向
メタバースの基本定義とその経済的インパクト
メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間で、ユーザーが3Dアバターを用いて交流や活動を行える次世代型のプラットフォームです。この空間では、リアルタイムでのコミュニケーションや、ゲーム、教育、ビジネス活動などが可能であり、現実世界と仮想世界が融合する新しい社会を形成しています。
経済的な側面では、メタバースはデジタル経済を大きく変革しています。仮想通貨やNFT(非代替性トークン)の活用により、デジタルアイテムやサービスが資産として取引され、メタバース内の経済圏が拡大しています。グローバル市場では、メタバース関連のビジネス規模が数兆円に達すると予測され、ゲームやエンターテインメント分野だけでなく、教育や医療、観光など多岐にわたる分野での応用が進行中です。
メタバースは単なるエンターテインメントではなく、企業や自治体が積極的に参入し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として活用されています。そのため、メタバースの普及は経済的なインパクトを与えるだけでなく、社会的な価値を再構築する重要な役割を果たすと期待されています。
日本におけるメタバースの需要と成長要因
日本では、メタバースの需要が近年急速に高まっています。その要因の一つとして挙げられるのは、エンターテインメント産業の強さです。日本はアニメやゲーム、キャラクター文化が世界的に人気であり、これらを基盤にしたメタバース空間は国内外のユーザーから支持を集めています。特に、バーチャルライブや展示会、SNS型のメタバースが若者を中心に普及しています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークやオンラインイベントが急増し、仮想空間の重要性が再認識されました。企業がバーチャル展示会や商談会を開催する動きが活発化し、教育分野でも仮想教室が導入されています。こうした背景がメタバースの需要を押し上げる要因となっています。
一方で、技術革新も日本市場の成長を後押ししています。5Gの普及やVR/ARデバイスの進化により、より高品質なメタバース体験が可能になり、個人ユーザーから企業まで、幅広い層が利用する土壌が整いつつあります。
グローバル市場との違いと日本市場の特徴
グローバル市場では、Meta(旧Facebook)やEpic Games、Robloxなどの巨大企業がメタバース開発をリードしています。一方、日本市場の特徴は、文化的背景を活かしたコンテンツの多様性にあります。例えば、日本のメタバースプラットフォームは、アニメやマンガ、キャラクター文化を活用した独自性の高い空間を提供することが多く、国内外のユーザーから支持を集めています。
また、日本のメタバースは比較的小規模ながらも、利用者が「共創」を楽しむことに特化している点が特徴です。ユーザーが自らイベントを開催したり、デジタルアイテムを制作・販売したりする場が多く、コミュニティ形成が活発です。さらに、日本特有の礼儀やマナーが、オンライン空間でも反映されており、比較的良質なユーザー体験を提供しています。
ただし、グローバル市場に比べて課題もあります。例えば、高性能デバイスやインフラ整備が進んでいない地域があること、そして法整備が遅れている点です。しかし、日本の強みであるエンターテインメント性と高い技術力を活用することで、今後さらに成長する可能性を秘めています。
メタバース関連企業が提供する主なサービス
バーチャルイベントと展示会
メタバース関連企業が提供する代表的なサービスの一つが、バーチャルイベントや展示会の開催支援です。企業が物理的な制約を超えて、仮想空間で製品やサービスを紹介する機会を提供します。このサービスは、ビジネスの効率性を高めるだけでなく、世界中の参加者をターゲットにしたマーケティングやプロモーションにも効果的です。
仮想空間内では、3Dモデルや動画を活用して製品の特性を視覚的に示すことができ、リアルタイムでの質疑応答や商談も可能です。例えば、日本のメタバース企業である株式会社HIKKYは、バーチャルマーケット「Vket」を通じて、企業や個人が商品や作品を展示・販売できる場を提供しています。こうした取り組みにより、従来の展示会以上のインタラクティブな体験を生み出しています。
アバター作成・交流プラットフォーム
アバター技術を活用した新たな交流の形も、メタバース関連企業が提供する重要なサービスの一つです。アバターを通じて、ユーザーが仮想空間内で自己表現を行い、他のユーザーと交流を楽しむことができます。日本では、REALITY株式会社が提供する「REALITY」や、NAVER Z Corporationが開発する「ZEPETO」が代表例です。
これらのプラットフォームは、手軽にアバターを作成し、リアルタイムで他のユーザーとコミュニケーションを取ることができる点で人気があります。また、アバターを通じたイベント参加やライブ配信など、多彩な活用シーンが提供されています。これにより、ユーザーは自己表現を楽しむだけでなく、グローバルなネットワークを築くことが可能です。
教育・研修ソリューション
メタバースを活用した教育・研修ソリューションも注目されています。仮想空間は、現実世界では再現が難しいシチュエーションを提供できるため、特に専門的なトレーニングやシミュレーションにおいて効果を発揮します。
例えば、医療分野では外科手術のシミュレーションが可能であり、建設業では仮想現場での安全教育が行えます。また、学校教育においても、仮想教室でのインタラクティブな学習が実現しています。これらのソリューションを支援する企業としては、monoAI technology株式会社やSynamonなどが挙げられ、技術的な専門性とユーザー体験を両立したプラットフォームを提供しています。
仮想空間構築・デザイン
メタバースにおける仮想空間構築やデザインも、関連企業が手掛ける主要なサービスです。仮想空間は、ただの空間ではなく、企業や個人が目指す体験や目的に合わせて設計されるべきものです。これには、リアリスティックな都市環境やファンタジーの世界、教育用の施設など、多様なコンセプトがあります。
日本企業では、株式会社Synamonが「XR CLOUD」を通じて、企業向けのカスタマイズ可能な仮想空間を提供しています。また、HIKKYは「Vket Cloud」により、誰でも簡単に仮想空間をデザインできるプラットフォームを開発しています。こうしたサービスにより、企業や個人が簡単に仮想空間を利用できる環境が整備され、メタバースの普及がさらに進んでいます。
日本の主要なメタバース関連企業10選
メタバースのプラットフォームを提供している会社
1.クラスター株式会社
クラスター株式会社は、VR空間で人々が集えるメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」の企画・開発・運営を行う日本の企業です。
同社は、スマートフォン、PC、VR機器など多様なデバイスからアクセス可能なバーチャル空間を提供し、ユーザーは音楽ライブや発表会などのイベントに参加したり、バーチャルワールドでのチャットやゲームを楽しむことができます。
2015年の設立以来、クラスター株式会社はメタバース領域での存在感を高めており、2024年時点でイベントの累計動員数は3,500万人を超える国内最大級のプラットフォームへと成長しています。
同社は、ユーザーが自由に集まり、交流し、コンテンツを楽しむことができるバーチャル空間を提供することで、新たなコミュニケーションの形を提案しています。
クラスター株式会社は、メタバースの可能性を追求し続け、ユーザーに多様な体験を提供することを目指しています。
2.REALITY株式会社
REALITY株式会社は、スマートフォン向けメタバースプラットフォーム「REALITY」を提供しています。ユーザーはスマートフォン1台でオリジナルのアバターを作成し、顔出し不要でライブ配信やゲーム、コミュニケーションを楽しむことができます。
2022年10月時点で、「REALITY」の全世界ダウンロード数は1,000万を突破し、世界63の国と地域で12言語に対応しています。
この広がりにより、グローバルなユーザー基盤を持つメタバースプラットフォームとして成長を続けています。
また、法人向けには「REALITY World」というサービスを提供しており、企業はこのプラットフォーム上でプロモーションやバーチャル支店の開設、メタバース広告の展開などを行うことができます。
例えば、2022年11月には三井不動産グループと連携し、「REALITY」内に「東京ドームワールド」を期間限定でオープンしました。このバーチャル空間では、ユーザーがアバターでライブ配信を行ったり、観客として参加したりすることが可能で、メタバースならではの演出が施されています。
REALITY株式会社は、「なりたい自分で、生きていく。」というビジョンのもと、個人ユーザー向けのメタバース提供だけでなく、法人向けのメタバース構築プラットフォーム「REALITY XR cloud」の運営や、Web3事業としてブロックチェーンゲームの開発・パブリッシングも展開しています。
これにより、個人と企業の双方に対して多様なメタバース体験を提供し続けています。
3.株式会社HIKKY
株式会社HIKKYは、メタバース領域で多彩なサービスを提供する日本の企業です。特に、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット(Vket)」の主催で知られています。このイベントは、世界中から130万人以上の来場者を集め、ギネス世界記録™を4つ取得するなど、大きな注目を集めています。
「バーチャルマーケット」は、ユーザーが仮想空間内でアバターや3Dモデルなどのデジタルアイテムを購入・販売できる場を提供しています。また、トヨタ、日清食品、みずほ銀行などの大手企業も出展し、バーチャル空間での新たなマーケティング手法を展開しています。
さらに、HIKKYは独自のメタバースエンジン「Vket Cloud」を開発・提供しています。これにより、ユーザーはブラウザ上で高品質な3Dコンテンツを体験でき、企業やクリエイターが手軽にメタバース空間を構築することが可能となっています。
HIKKYは、メタバースを活用したクリエイティブなコンテンツ制作やイベント企画・運営を通じて、バーチャル体験の普及に貢献しています。その活動は、日本国内のみならず、世界中のユーザーや企業から高い評価を受けています。
4.KDDI株式会社
KDDIは、2023年3月にメタバース・Web3サービス「αU(アルファユー)」を開始しました。このサービスは、現実と仮想の世界をシームレスに行き来できる新世代のユーザーに向け、音楽ライブ、アート鑑賞、ショッピングなどの日常体験を仮想空間で提供することを目的としています。
「αU」は以下の主要なサービスで構成されています。
αU metaverse
バーチャル空間に再現された渋谷や大阪の街を舞台に、アーティストによる音楽ライブやユーザー同士のコミュニケーションを楽しめるメタバースサービスです。
αU live
360度自由視点の高精細な映像で音楽ライブを視聴できるサービスで、リアルのライブに近い体験を提供します。
αU market
デジタルアート作品(NFT)などを購入できるマーケットプレイスで、クレジットカード決済やauかんたん決済に対応し、初めてのユーザーでも簡単にNFTを購入できます。
αU wallet
デジタルアート作品や暗号資産を安全に管理・売買できる暗号資産ウォレットです。
αU place
実店舗と連動したバーチャル店舗でショッピングができるサービスで、リアルとバーチャルの境界を超えた新しい購買体験を提供します。
これらのサービスを通じて、KDDIはクリエイターが価値を生み出し、その対価を得られる「クリエイターエコノミー」の創出を目指しています。また、国内外のパートナーと連携し、日本のクリエイターやコンテンツのグローバル展開をサポートしています。
さらに、KDDIは企業や自治体のメタバース事業活用を支援するため、複数のメタバースプラットフォームと連携し、コンサルティングから企画・制作まで一貫したサービスを提供しています。これにより、複数プラットフォームでの同時展開も可能となり、メタバースの活用範囲を広げています。
KDDIの「αU」は、リアルとバーチャルの境界をなくし、ユーザーがいつでもどこでも多彩な体験を楽しめる新しい世界を提供しています。これにより、ユーザーは新たなエンターテインメントやコミュニケーションの形を体験することができます。
5.株式会社NTTコノキュー
NTTグループは、メタバース事業に積極的に取り組んでおり、以下の主要なプラットフォームを展開しています。
DOOR
「DOOR」は、NTTコノキューが提供する仮想空間プラットフォームです。ユーザーはスマートフォンやPCなどのデバイスからブラウザを通じてアクセスでき、専用アプリのインストールは不要です。このプラットフォームでは、誰でも簡単にバーチャルルームを作成でき、ビジネスやプライベートなど多様なシーンでの活用が可能です。
XR World
「XR World」は、NTTが提供するマルチデバイス対応のメタバースプラットフォームです。ユーザーはアバターを通じてバーチャル空間内でコミュニケーションを楽しむことができ、音楽、アニメ、ダンスなど多彩なコンテンツが提供されています。スマートフォンやPCから手軽にアクセス可能で、専用のヘッドマウントディスプレイは不要です。
XR City
「XR City」は、NTTコノキューが展開するデジタルツイン事業の一環として提供されるプラットフォームです。特定のエリアでスマートフォンをかざすと、その場所に適したARコンテンツが表示され、現実世界と仮想空間を融合させた新たな体験を提供します。自治体や商業施設と連携し、エリアやコンテンツの拡充を進めています。
これらのプラットフォームを通じて、NTTグループはリアルとバーチャルが融合する新たな体験価値を提供し、メタバース市場での存在感を高めています。
6.ソフトバンク株式会社
ソフトバンクは、メタバースプラットフォーム「ZEPETO」を提供しているNAVER Zに出資しています。
ZEPETOは、ユーザーが自分好みの3Dアバターを作成し、他のユーザーと交流したり、ゲームを楽しんだりできるメタバースアプリです。その特徴的な機能と多彩なコンテンツにより、全世界で3億人以上のユーザーを魅了しています。ZEPETOの主な特徴は以下です。
アバター作成の多様性
ユーザーは自身の写真を基に、細部までカスタマイズ可能な3Dアバターを簡単に作成できます。髪型、服装、アクセサリーなど、多彩なオプションが用意されており、個性豊かなアバターをデザインすることが可能です。
多彩なバーチャル空間
ZEPETO内には、ユーザーが自由に探索できるさまざまなバーチャルワールドが存在します。友人と一緒に仮想の街を歩いたり、特定のテーマパークで遊んだりすることができます。
コミュニケーション機能
チャットやボイスメッセージを通じて、他のユーザーとリアルタイムで交流できます。また、共同で写真を撮影したり、ダンスなどのアクションを同期させることも可能です。
ユーザー生成コンテンツ
ユーザー自身が衣装やアクセサリーをデザインし、他のユーザーに提供することができます。これにより、コミュニティ内でのクリエイティブな交流が促進されています。
7.monoAI technology株式会社
monoAI technology株式会社は、最先端のテクノロジーを活用し、新たなデジタル空間を提供する日本の企業です。
同社は、法人向けメタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を開発・提供しています。
このプラットフォームは、PCやスマートフォン、タブレットなどのマルチデバイスに対応し、ブラウザベースで高品質なバーチャル空間を提供します。これにより、ユーザーは専用アプリのインストールなしで、シームレスにメタバース体験を楽しむことができます。
また、monoAI technologyは、企業や自治体の課題に応じた最適なメタバースを提供する「オープンメタバースネットワーク」を発足させました。
このネットワークは、複数のメタバースプラットフォームが連携し、メタバース利活用におけるコンサルティングからイベント企画、空間コンテンツ制作までを一貫して提供するものです。これにより、企業や自治体は、複数のメタバースを活用した立体的な施策立案が可能となり、スムーズな導入や事業課題の解決が期待できます。
さらに、同社は「monoXR」というXR関連サービスも展開しています。これには、VRやARを活用したコンテンツ制作やイベントサービスが含まれ、ユーザーに新たな体験価値を提供しています。
これらの取り組みを通じて、monoAI technologyは次世代のビジネスや生活スタイルを創造し、メタバース市場での存在感を高めています。
メタバース制作を提供している会社
8.アドバーチャ株式会社
アドバーチャ株式会社は、ゲームやメタバース内の看板に動画広告を配信する新時代の広告ネットワーク「Ad-Virtua(アドバーチャ)」を提供しています。このサービスは、ゲームの世界観を損なうことなく、自然な形で広告を表示することを目指しています。
2024年11月時点で、広告動画の累計再生数は1,000万回を突破し、対応ゲームタイトル数は300以上に達しています。これにより、広告主は広範なユーザー層にリーチでき、ゲーム開発者は新たな収益源を得ることが可能となっています。
同社は、2022年8月1日に設立され、資本金は14,886,100円です。本社は東京都渋谷区神宮前に位置しています。
Ad-Virtuaの特徴として、ユーザー体験を妨げない自然な広告表示が挙げられます。従来の画面全体を覆う広告とは異なり、ゲーム内の看板やモニターに広告を表示することで、ユーザーはゲームプレイを中断することなく広告に触れることができます。
さらに、2024年11月には、国内最大級のゲームメディア「ファミ通」との協業を発表し、動画制作付きの広告配信パッケージプランをリリースしました。これにより、高品質な広告コンテンツの提供が可能となり、広告主にとって効果的なプロモーション手段を提供しています。
アドバーチャ株式会社は、メタバース広告の分野で革新的なサービスを展開し、ユーザー体験を重視した新たな広告モデルを提供しています。これにより、広告主、ゲーム開発者、ユーザーの三者にとって価値のあるエコシステムを構築しています。
9.株式会社Synamon
株式会社Synamon(シナモン)は、「XRが当たり前の世界をつくる」をミッションに掲げ、VRやARなどのXR技術やメタバース市場の発展に取り組む日本の企業です。同社は、企業向けにメタバース技術の活用支援を行い、さまざまな分野でのデジタルトランスフォーメーションを推進しています。
2022年10月、Synamonは新たな基幹プロダクトとして、メタバースブランディングプラットフォーム「SYNMN(シナモン)」のオープンベータ版を提供開始しました。このプラットフォームは、スマートフォン、PC、VRデバイスなどのマルチデバイスに対応し、IPやブランドの3D空間をユーザーが楽しめる環境を提供しています。企業やクリエイターのブランディングやファンマーケティングを支援することを目的としており、継続的な運用をサポートする管理画面や、NFTの活用によるマネタイズやエンゲージメント向上の仕組みも備えています。
また、Synamonは建設業界においてもメタバース技術を活用しています。2021年12月には、総合建設会社の株式会社奥村組と協力し、奥村組技術研究所内に「メタバース技術研究所」を構築しました。この取り組みでは、BIMモデルを活用したVRシミュレーションを通じて、工事の検討精度を向上させ、設計・施工工数の削減を目指しています。
Synamonは、これらの取り組みを通じて、企業のメタバース活用を支援し、XR技術の普及と新たな価値創造に貢献しています。
10.株式会社Thirdverse(サードバース)
株式会社Thirdverse(サードバース)は、VRゲームの企画・開発・販売・運営を行う日本の企業です。同社は「10億人が生活する、新しい仮想世界の創造」をビジョンに掲げ、メタバース上にサードプレイスを創ることを目指しています。
代表的な作品として、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』や、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム『ALTAIR BREAKER』、VRマルチプレイヒーローシューター『X8』などがあります。
2024年3月には、海外成長戦略のため経営体制を強化し、共同代表に大野木勝氏が就任しました。また、同年8月にはシリーズDの資金調達を完了し、シリーズ累計で17億円を調達しています。
Thirdverseは、VRゲーム市場の最前線を走り続け、メタバースの中に「サードプレイス」を実現することを目指しています。同社は、VR技術を活用した新たなエンターテインメント体験を提供し、仮想世界での新しい生活様式を創造することに注力しています。
メタバース関連企業を選ぶポイント
目的に合ったサービスの提供
メタバース関連企業を選ぶ際の第一のポイントは、自身の目的に合ったサービスを提供しているかどうかです。ビジネス、教育、エンターテインメントなど、用途によって必要な機能やサポート内容が異なるため、目的を明確にした上で選択することが重要です。
例えば、バーチャルイベントやプロモーションを考える企業には、Vket CloudやXR CLOUDのようなバーチャル展示会やイベント開催に特化したプラットフォームが適しています。一方で、教育やトレーニングを目的とする場合は、専門分野でのシミュレーションや仮想教室を提供するmonoAI technologyやSynamonが候補となります。エンターテインメント分野では、REALITYやclusterのような多彩な交流機能を備えたプラットフォームが最適です。
技術力と実績の確認
選択する企業がどれだけの技術力と実績を持っているかも、重要な判断材料となります。仮想空間の構築や運営には高度な3Dモデリング、プログラミング、ネットワーク技術が必要であり、それを支える企業の実績はサービスの信頼性や品質に直結します。
例えば、Epic GamesやMeta(旧Facebook)などのグローバル企業は、メタバース関連技術のリーダーとして確固たる地位を築いています。また、日本国内でもHIKKYやクラスター株式会社などが数多くの成功事例を持ち、信頼を得ています。過去のプロジェクト事例やクライアントの声を調べることで、企業の実績を確認することができます。
コストと導入の手軽さ
利用料金や導入の手軽さも、企業選びにおいて見逃せないポイントです。メタバース関連サービスの料金体系は、無料で利用できるものから高額なカスタマイズ費用がかかるものまで幅広いため、予算に応じた選択が必要です。
例えば、初期投資を抑えたい場合は、無料で基本機能を利用できるREALITYやDOORのようなプラットフォームが適しています。一方で、高度なカスタマイズや専門機能が必要な場合は、企業向けのカスタマイズサービスを提供するSynamonやmonoAI technologyが候補となります。また、利用しやすいインターフェースやサポート体制が整っているかも、選択時に確認しておくべきポイントです。
日本のメタバース関連企業が直面する課題
技術革新のスピードへの対応
日本のメタバース関連企業が直面する最大の課題の一つは、急速な技術革新に対応する能力です。AI、5G、ブロックチェーン、XR(拡張現実)などの技術は日々進化しており、グローバル市場ではこれらの技術を組み込んだ革新的なサービスが次々と登場しています。このスピード感に対応するためには、企業は技術開発力を強化し、研究開発への投資を増やす必要があります。
しかし、日本企業の多くは慎重なアプローチを取る傾向があり、イノベーションのスピードが海外の競合企業に比べて遅れることがあります。これを克服するには、外部との連携を強化し、スタートアップや研究機関との協力を進めることが重要です。また、既存技術を迅速に取り入れる柔軟性も求められます。
コスト削減と収益性のバランス
メタバース関連の事業には、初期の開発費用やインフラ整備、継続的な運営コストがかかります。一方で、市場全体がまだ成長過程にあるため、収益化が課題となるケースが多いです。特に、日本市場は慎重な消費傾向があり、ユーザーが高額なデバイスやサービスに積極的に投資しない場合があります。
企業は、低コストで魅力的なサービスを提供する方法を模索する必要があります。クラウドサービスやSaaS(サービスとしてのソフトウェア)モデルを活用することで、コスト削減を図ると同時に、利用料金の設定を柔軟に行うことが有効です。また、広告モデルやパートナーシップを活用した収益源の多様化も重要です。
国際競争力の強化と市場拡大
日本のメタバース関連企業は、国内市場だけでなく国際市場でも競争力を発揮する必要があります。しかし、言語や文化の壁、海外市場への進出経験の不足が障壁となることがあります。特に、北米や欧州ではメタバース関連の技術やプラットフォームが先行しており、日本企業がこれに対抗するには独自の価値提案が求められます。
これを克服するためには、グローバルな視点で製品やサービスを設計し、海外展開を視野に入れた戦略を構築することが必要です。また、現地パートナーとの協力や、国際イベントへの積極的な参加を通じて、ブランド認知を高める取り組みも求められます。
さらに、日本の強みである高品質な技術や、アニメ・ゲームなどの文化的要素を活かした差別化も国際競争力を高める鍵となります。
まとめ
日本のメタバース産業は、独自の文化や技術を活かしながら、世界市場での競争力を高める可能性を秘めています。次世代技術であるAI、5G、XRとの融合により、これまでにないリアルタイムで没入感のある体験を提供し、エンターテインメントや教育、観光産業など多岐にわたる分野で活用が進んでいます。
さらに、地域振興や観光産業との連携を通じて、日本国内だけでなく、国際的な観光需要を取り込む新たな可能性も広がっています。特に、日本文化の象徴であるアニメやゲーム、伝統的なイベントのデジタル化は、国内外のユーザーにとって大きな魅力となるでしょう。
一方で、国際競争力の強化や技術革新への対応といった課題もあり、持続可能な発展を目指すためには、企業や自治体が協力し合い、創造的な取り組みを進めることが求められます。
これからの日本のメタバース産業は、技術力と文化的独自性を武器に、新しい市場を開拓し、地域や社会の活性化にも貢献することが期待されています。自分たちの目的やニーズに合ったプラットフォームを活用し、メタバースを通じた未来の可能性を一緒に探求していきましょう。